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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

例の紳士も、命ぜられて飯粒を盛んにこねまわしていた。この協力のかいあって、僅か十分たらずで眼張ができあがった。なお軍曹は毛布とシーツとを集めて出入口の扉よりすこし中へ入ったところに仕切りの幕をつくった。間違って出入口が開いても、毒瓦斯はこの幕で一時食いとめられる仕掛にして、そこには学生を二人ずつ、番兵につけた。

彼等はピッケルを、小銃のように持って警備についた。こうして全く安心のできる簡易瓦斯避難室ができあがった。

婦人たちは、いずれもニコニコ顔で、車内をなんべんも見まわした。

列車が、柏原駅についたとき、指揮をしていた鍛冶屋の大将は、なにを思ったものか、つと扉をあけて、プラットホームへ下りた。どこへ行ったんだろう?

やがて列車はガタンゴトンと動きだした。しかし鍛冶屋の大将はどうしたのか、車内に姿をあらわさなかった。同室の人たちの顔には不安の色が浮かびあがった。

急造の防毒面

「どうしたんだろうな、われ等の防護団長は……」

と、商人辻村氏が、遂に心配の声をあげた。そのとき出入口の扉が、ガラリと開く音がきこえ、そして、毛布の幕の間から姿をあらわしたのは、案じていた鍛冶屋の大将だった。