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りゅうたんだん

竜潭譚

泉 鏡花

「文芸倶楽部」1896(明治29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,899 字 · 30 页

青空文庫

かくれあそび

ただひとえにゆう日照りそいたるつつじの花の、わが丈よりも高き処、前後左右を咲埋めたるあかき色のあかきがなかに、緑と、紅と、紫と、青白の光を羽色に帯びたる毒虫のキラキラと飛びたるさまの広き景色のみぞ、画のごとく小さき胸にえがかれける。

かくれあそび

さきにわれ泣きいだして救を姉にもとめしを、渠に認められしぞ幸なる。いうことを肯かで一人いで来しを、弱りて泣きたりと知られむには、さもこそとて笑われなむ。優しき人のなつかしけれど、顔をあわせて謂いまけむは口惜しきに。

嬉しく喜ばしき思い胸にみちては、また急に家に帰らむとはおもわず。ひとり境内に彳みしに、わッという声、笑う声、木の蔭、井戸の裏、堂の奥、廻廊の下よりして、五ツより八ツまでなる児の五六人前後に走り出でたり、こはかくれ遊びの一人が見いだされたるものぞとよ。二人三人走り来て、わがそこに立てるを見つ。皆瞳を集めしが、

「お遊びな、一所にお遊びな。」とせまりて勧めぬ。小家あちこち、このあたりに住むは、かたいというものなりとぞ。風俗少しく異なれり。児どもが親達の家富みたるも好き衣着たるはあらず、大抵跣足なり。