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りょくいのおんな
緑衣の女
松本 泰
「秘密探偵雑誌」1923(大正12)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,168 字 · 25 页
「何にそれは斯うですよ。私の歩いていたのはH通りの右側で、前方から来た自動車の中央にグヰンがいて、その両傍に年とった婦人と若い男が腰をかけていたからです。自動車には女連を先にして、後から男が乗るのが英国式じゃアありませんか。第二か第三の横通りにある家の前から乗っていた自動車の位置によって、その家が右側にあるか、左側にあるか分る筈です。」
泉原はそういって左側の家から順々と見ていったものゝ、どの家も道路に向った窓を鎖して、無人の境のように静り返っていた。二人は稍失望を感じて同じ道路を戻ってくると、泉原はフトある家の前で足を停めた。彼はその家の三階の窓に、鉢植の草花を発見したのである。草花の鉢は雨が降れば取込む事にきまっている。見渡すところ、その家を除いては何処の窓にも、植木鉢を出しっぱなしにしておく家はなかった。取込まないのはその部屋に住む人が忘れているのか、或は何かの事情で窓を開ける事を欲しないのか。強い風を交えた雨に、赤いゼラニウムの花が散々に打たれていた。敷石の上に一本の毛ピンが落ちていた。それを発見けて拾上げたのはギルであった。二人は何という事なく顔を見合せると、改めて高い三階の窓を見上げた。