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はなのさくまえ
花の咲く前
小川 未明
「お話の木」1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,442 字 · 13 页
三
」
幸吉は、このうえ、自分を連れていこうとするのは、自分を降伏させるものだと思ったので、つい怒り声を出したが、しまいにそこにいたたまらなくなって、またあてもなく駆け出していきました。
三
幸吉が店へ帰ると、仕事場に立っていた叔父さんは、さも手柄顔をして、
「ジャックの奴、うまく物置へ入れて閉めてしまった。いまに犬殺しがきたら引き渡してくれるのだ。」といいました。幸吉は、これをきくと、どきっとしました。なにか真っ黒な手で胸を押さえつけられたような気味悪さを感じました。「赤トラ」の話に強く心を惹かれたのも、このジャックという年老いた不幸の野犬のことが、たえず頭の中にあったからでした。叔父は、どういうものかジャックを心から憎んでいるのでした。それにはたいした理由があるのでなく、ただこの哀れな黒い毛の汚れた老犬を見ると、むらむらと憎くなるというふうでした。幸吉は、それを怖ろしいことのように思いました。幸吉は、あるときには、たまりかねて、叔父さんの顔を見上げながら、
「叔父さん、ジャックをかわいがっておやりよ。かわいそうじゃないか。」といいました。
「どういうものか、あいつはきらいでな。