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くさまくら
草枕
一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页
はげた茶の帽子に、藍縞の尻切り出立ちと、陽炎さえ燃やすべき櫛目の通った鬢の色に、黒繻子のひかる奥から、ちらりと見せた帯上の、なまめかしさ。すべてが好画題である。
男は手を出して財布を受け取る。引きつ引かれつ巧みに平均を保ちつつあった二人の位置はたちまち崩れる。女はもう引かぬ、男は引かりょうともせぬ。心的状態が絵を構成する上に、かほどの影響を与えようとは、画家ながら、今まで気がつかなかった。
二人は左右へ分かれる。双方に気合がないから、もう画としては、支離滅裂である。雑木林の入口で男は一度振り返った。女は後をも見ぬ。すらすらと、こちらへ歩行てくる。やがて余の真正面まで来て、
「先生、先生」
と二声掛けた。これはしたり、いつ目付かったろう。
「何です」
と余は木瓜の上へ顔を出す。帽子は草原へ落ちた。
「何をそんな所でしていらっしゃる」
「詩を作って寝ていました」
「うそをおっしゃい。今のを御覧でしょう」
「今の? 今の、あれですか。ええ。少々拝見しました」
「ホホホホ少々でなくても、たくさん御覧なさればいいのに」
「実のところはたくさん拝見しました」
「それ御覧なさい。まあちょっと、こっちへ出ていらっしゃい。