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くさまくら
草枕
一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页
折りから、竈のうちが、ぱちぱちと鳴って、赤い火が颯と風を起して一尺あまり吹き出す。
「さあ、御あたり。さぞ御寒かろ」と云う。軒端を見ると青い煙りが、突き当って崩れながらに、微かな痕をまだ板庇にからんでいる。
「ああ、好い心持ちだ、御蔭で生き返った」
「いい具合に雨も晴れました。そら天狗巌が見え出しました」
逡巡として曇り勝ちなる春の空を、もどかしとばかりに吹き払う山嵐の、思い切りよく通り抜けた前山の一角は、未練もなく晴れ尽して、老嫗の指さす方にと、あら削りの柱のごとく聳えるのが天狗岩だそうだ。
余はまず天狗巌を眺めて、次に婆さんを眺めて、三度目には半々に両方を見比べた。画家として余が頭のなかに存在する婆さんの顔は高砂の媼と、蘆雪のかいた山姥のみである。蘆雪の図を見たとき、理想の婆さんは物凄いものだと感じた。紅葉のなかか、寒い月の下に置くべきものと考えた。宝生の別会能を観るに及んで、なるほど老女にもこんな優しい表情があり得るものかと驚ろいた。あの面は定めて名人の刻んだものだろう。惜しい事に作者の名は聞き落したが、老人もこうあらわせば、豊かに、穏やかに、あたたかに見える。