轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

「週刊朝日春季増刊」朝日新聞社、1950(昭和25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,178 字 · 72 页

青空文庫

……うしろでなにか叫ぶ声がした、誰か追って来るらしい。だが菊千代は眼のくらむような気持で、手綱を絞ることも轡を緊めることも思いうかばず、いま落ちるか、いまか、とただ夢中で歯をくいしばっていた。

どのくらい走ったものか、気がつくと竹中師範と半三郎とが、左右から馬を寄せてこちらに来、こちらの乗馬を挾むようにして、広い草原のなかへ追いこみ、なお狂い出ようとするのを、左右から抑え抑え、草原の端にある寺の生垣のところでようやく止めた。

半三郎はすばやく来て轡を取り鐙を押えた。彼はまっ蒼なひきつったような顔で、汗みずくになり、激しく喘いでいた。菊千代は馬から下りると、足がふらふらし、嘔きけを感じたので、そのまま枯草の上へ腰をおろした……和島や師範がしきりに詫びを云い、そこへまた遅れた学友たちが乗りつけた。

「――もういい、なんでもない」

菊千代はうるさくなって手を振った。

「――少し休むから、みんな離れて呉れ、半三郎がいればよい」

みんなはすぐには動こうとしなかった。菊千代は顔をあげて、例のない鋭い眼でかれらを睨んだ、それでようやくみんなそこを離れ、草原の中ほどへいって、馬と人とでこちらを隠すようにした。