轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
「何か寂しそうだったな、あの人は……。」明はそう考えながら駅を出た。
「菜穂子さんでもどうかしたのではないかな? ひょっとすると病気かも知れない。この前見たときそんな気がした。それにしても、あの時はもっと取つき悪い人のように見えたが、案外好い人らしいな。何しろ、おれと来たら、何処か寂しそうなところのない人間は全然取つけないからなあ。……」
明は自分の下宿に帰ると、咳の発作を怖れてすぐには服を脱ぎ換えようともしないで、西を向いた窓に腰かけた儘、事によると菜穂子さんは何処かずっと此の西の方にある、遠い場所で、自分なんぞの思い設けないような不為合せな暮らし方でもしているのではないかと考えながら、生れて初めてそちらへ目をやるように、夕焼けした空や黄ばんだ木々の梢などを眺めていた。空の色はそのうちに変り始めた。明はその色の変化を見ているうちに、急にたまらないほど悪寒を感じ出した。
黒川圭介は、その時もまださっきと同じ考え事をしているような様子で、夕焼けした西空に向いながら、プラットフォームの端にぼんやりと突立っていた。彼はさっきからもう何台となく電車をやり過していた。