轻松读懂日语经典作品
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
二十一
此の喪失に堪えるのがおれの使命だと云う事でもはっきり分かってさえ居れば、おれは一生懸命にそれに堪えて見せるのだが。――ああ、それにしても今此のおれの身体を気ちがいのようにさせている熱と悪感との繰り返しだけは、本当にやり切れないなあ。……」
そのとき漸く森が切れて、枯れ枯れな桑畑の向うに、火の山裾に半ば傾いた村の全体が見え出した。家々からは夕炊の煙が何事もなさそうに上がっていた。およう達の家からもそれが一すじ立ち昇っているのが見られた。明は何かほっとした気持ちになって、自分の身体中が異様に熱くなったり寒気がしたりし続けているのも暫く忘れながら、その静かな夕景色を眺めた。彼が急に思いがけず自分の穉い頃死んだ母のなんとなく老けた顔をぼんやりと思い浮べた。さっき森の中で一本の樺の枝の網目が彼にこっそりとその粗描をほのめかしただけで、それきり立ち消えてしまっていた何かの影が、そんな殆ど記憶にも残っていない位のとうの昔に死んだ母の顔らしかった事に明はそのときはじめて気がついた。
二十一
連日の旅の疲れに痛めつけられた身体を牡丹屋に托した日から、明は心の弛みが出たのか、どっと床に就ききりになった。