轻松读懂日语经典作品
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
九
二人は相変らず自転車を中にして互に近づいたり離れたりしながら歩いていた。
九
六月にはいってから、二十分の散歩を許されるようになった菜穂子は、気分のいい日などには、よく山麓の牧場の方まで一人でぶらつきに行った。
牧場は遥か彼方まで拡がっていた。地平線のあたりには、木立の群れが不規則な間隔を置いては紫色に近い影を落していた。そんな野面の果てには、十数匹の牛と馬が一しょになって、彼処此処と移りながら草を食べていた。菜穂子は、その牧場をぐるりと取り巻いた牧柵に沿って歩きながら、最初はとりとめもない考えをそこいらに飛んでいる黄いろい蝶のようにさまよわせていた。そのうちに次第に考えがいつもと同じものになって来るのだった。
「ああ、なぜ私はこんな結婚をしたのだろう?」莱穂子はそう考え出すと、何処でも構わず草の上へ腰を下ろしてしまった。そして彼女はもっと外の生き方はなかったものかと考えた。「なぜあの時あんな風な抜きさしならないような気持になって、まるでそれが唯一の避難所でもあるかのように、こんな結婚の中に逃げ込んだのだろう?」彼女は結婚の式を挙げた当時の事を思い出した。