轻松读懂日语经典作品
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
長与は人にものを訊くときの癖で妙に目を瞬きながら訊いた。
「何、大した事はなさそうだよ。」圭介はそれを軽く受流しながら、それから話を外らせようとした。菜穂子が胸を患って入院している事は、母がそれを厭がって誰にも話さないようにしているのに、どうして此の男が知っているのだろうかと訝しかった。
「何でも一番悪い患者達の特別な病棟へはいっているんだそうじゃないか。」
「そんな事はない。それは何かの間違えだ。」
「そうか。そんなら好いが……。そんな事を此の間うちのおふくろが君んちのおふくろから聞いて来たって云ってたぜ。」
圭介はいつになく顔色を変えた。「うちのおふくろがそんな事を云う筈はないが……。」
彼はいつまでも妙な気持になりながら、その友人を不機嫌そうに送り出した。
その晩、圭介は母と二人きりの口数の少ない食卓に向っているとき、最初何気なさそうに口をきいた。
「菜穂子が入院している事を長与が知っていましたよ。」
母は何か空惚けたような様子をした。「そうかい。そんな事があの人達にどうして知れたんだろうね。」
圭介はそう云う母から不快そうに顔を外らせながら、不意といま自分の傍にいないものが急に気になり出したように、そちらへ顔を向けた。