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あしはみていた
葦は見ていた
山本 周五郎
「週刊朝日」1947(昭和22)年6月22日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,985 字 · 36 页
七
計之介は云った。
「子供は二人でたくさんだよ」
七
計之介は三十五歳のとき江戸詰になり、中老のまま留守役監事という役についた。知れているとおり留守役は藩の外交官で、監事はその事務を統轄する役目だった。仕事はごくじみちであるが、藩政の全般を知るのに適した位地であるため、後年彼には非常に役立ったようである。
江戸詰の任期は三年であるが、役付きになったために、計之介は江戸に六年いた、このあいだに国許へ二度帰ったが、そのたびに、彼の人柄が変ってゆくのを、周囲の者ははっきりと認めた。躯もがっちりと固肥りになり、顔つきには意志の強さと、一種の威厳さえあらわれだした。帰国すれば杉丸東次郎と会い、二人だけで食事をするのが例であったし、そのときはうちとけたようすで、いかにも楽しそうにするのだが、しかもなお、身分の差というものが歴然と感じられるのであった。
「みごとに立ち直ったものだ」と東次郎は深江に云った、「もうまちがいはない、彼はきっと国老になるぞ」
かつて予想された評が、しだいに家中ぜんたいの輿望になっていった。
留守役監事を六年勤めた彼は、側用人にあげられて、二百石加増された。