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とらがり

虎狩

中島 敦

「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,260 字 · 48 页

青空文庫

上級生との間に今云ったような経緯が前からあったので、それで彼も、その時、素直にあやまれなかったのであろう。其の夕方、天幕が張られてからも、彼はなお不安な落著かない面持をしていた。

幾十かの天幕が河原に張られ、内部に藁などを敷いて用意が出来ると、それぞれ、中で火をおこしはじめた。初めの中は薪がいぶって、とても中にはいたたまれなかった。やがて、その煙もしずまると、朝から背嚢の中でコチコチに固まった握飯の食事が始まる。それが終ると、一度外へ出て人員点呼。それがすんでから各自の天幕に帰って、砂の上に敷いた藁の上で休むことになる。テントの外に立つ歩哨は一時間交代で、私の番は暁方の四時から五時までだったから、それまでゆっくり睡眠がとれるわけだった。その同じ天幕の中には私達三年生が五人と(その中には趙も交っていた。)それに監督の意味で二人の四年生が加わっていた。誰も初めの中は仲々寝そうにもなかった。真中に砂を掘って拵えた急製の炉を囲み、火影に赤々と顔を火照らせ、それでも外からと、下からと沁みこんでくる寒さに外套の襟を立てて頸を縮めながら、私達は他愛もない雑談に耽った。