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じゃせいのしゅうねん
蛇性の執念
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页
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ます』
綾子さんはさめざめと泣くのでした。
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そこへ宿下りをしていたお梶さんが帰って参りました。
綾子さんはお梶さんの顔を見ると急に元気づいたので、私まで何だか安心したような気がいたしました。お梶さんは文夫さんのお母様とは乳姉妹で、また文夫さんの乳母でもありましたので、今は文夫さんに仕えるような心持ちで、心から綾子さんを大事にして居ました。
『梶に見せて上げるものがあるわよ』
綾子さんはじぶくろからキャビネ形の写真を出して来ました。
『こんなお写真見たことある? 文夫さまのお書斎をお片付けしたら、お机の上の書簡紙の間から出たんだけれどもね』
お梶さんは写真を手にして、一と目見ますと忽ち変な表情をいたしました。
『このお写真が――、まあ! どうして――。お書斎にございましたんですって?』
『梶は知ってるんでしょう? 私、ついぞこんなお写真拝見したことがなかったわ』
『不思議でございますねえ。これがどうしてお書斎にございましたか知ら?』
お梶さんはじっとその写真を見詰めているようなのですが、実はその眼はお写真を見ているのでもなく、何かこう幻影を追いながら、深い物思いにでも沈んでいるという風なのです。