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じゃせいのしゅうねん
蛇性の執念
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页
御婚約がお出来になってからだって、武雄様は幾度も隙を狙ってはくどいていらっしゃるんです。それを存じて居ますのは私一人でございます。ほんとを申すと綾子様は文夫様がお亡くなりになりました後、山科様の方へお帰りになっておしまいになればおよろしゅうございましたんです。私も随分それをおすすめいたしましたが、何分、お実家様のお母様が生さぬ仲でいらっしゃいましょう? 綾子様は御自分は死ぬより行途はないと仰しゃっていらっしゃいました位でございますから――』
お梶さんは涙ぐんでいい続けるのでございました。
『ちょっと考えますと、只今のようになりますのがいい解決でございますからね。せっかく御木井家と山科家との御縁が結ばれたのでございますから、これを放したくないというお考えが両家におありになるのも御尤もでございます。文夫様がお亡くなり遊ばし、武雄様がお跡をおとりになる、恰度お年頃もいいし、武雄様にも異議がおありにならないといえば、御再婚は四方八方好都合じゃございませんか。綾子様のお考えなんて聴いて上げようとも遊ばさずに、お話はずんずん進んでしまったのでございます』
『綾子さんがそんなにも武雄さんを嫌ってらしたことは、誰も知らなかったんですか?』