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しじみだに
蜆谷
山本 周五郎
「新読物」公友社 、1947(昭和22)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,957 字 · 28 页
庄屋も名主もよく知らないと答えた。村じゅうで相談したことで、自分たちはかかわらなかったというのである。そこで地子総代が問い詰められた。久八はまっ赤になり躯をちぢめながら、あまり筋の立たぬことを答えた。
「両方の田は働き手が留守でござりまして、村の者が手分けをして作をつかまつりましてござりまして、負けいくさなら損をするわけもあるまいから、ということになりましたものでござりまして、名主さまの勘考でそれなら日雇割りで分けるがよかろう、という話合いになったものでござりまして、それでもってからに」
「もうよい、それでわかった」又左衛門は首を振りながら叫んだ、「……源兵衛、ただいま久八の申したことに誤りはないか」
名主は平伏するばかりだった。又左衛門はさらにお八重に向かって、それ以来きょうまでどのように暮らして来たかを聞いた。お八重はすべてを語った、それは弥之助が母から聞いたよりもくわしく、しかもなまなまと鮮やかだった、蜆とりを始めて村の者から川筋五町を禁じられ、そのあとは二十町もけわしい道をさかのぼってとらなければならなかったというところまでくるとたまりかねたのだろう、弥之助はくいしばった歯の間からうめき声をもらせてすすり泣いた。