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しじみだに
蜆谷
山本 周五郎
「新読物」公友社 、1947(昭和22)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,957 字 · 28 页
と、念をおしてきた、これはたちまち村じゅうにひろまり人々の興味をひときわそそった。
法要はつつましく行なわれた、かつては見ごろし同様にした人たちが、うやうやしく仏前に低頭し、焼香をした、庄屋六平次も、源兵衛も、お直も、そのほか十七人の村人たちが……そしてなかには涙をふく者さえあった。式がすむと客間で茶菓が出された、そのとき弥之助が施主の席に直って、参会してくれた礼を述べたうえ、あらためて聞いてもらいたいことがあると云いだした。「こんど村へ帰ってから、私のしたことをみてあなたがたはどうお思いなすった」彼はしずかにこう始めた、「捕まって首を斬られるはずがお褒めにあずかり、田地二町、山林五町、蜆谷川筋一帯を永代無役でちょうだいした。さぞいい気持だろう、こう思っておいでじゃないだろうか、……もしそう思うとすれば大きな間違いですよ、私はそんなものはほしかない、ほかにもっとほしいものがあったんだ、なんだかわかりますかね」
「もとの御領主さまからお布令が出て、御陣へまいるためにこの村を出てゆくとき」弥之助はそこで両手を拳にして膝へ置いた、「あなたがたは幾たびも祝い酒をしてこう云った、あとのことは心配するな、どんなことがあっても残る者に不自由はさせない、家のことも田のことも案ずるにはおよばない、……くどいほどそう云ってくれ