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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

帆村は切歯扼腕して口惜しがった。

凶暴な機関銃手があの蠅男だということに決まれば、彼は事件をもう一度始めから考え直さねばならないと思った。

それから今の電話によって、もう一つ新しく知った事実があった。それは蠅男がいつも一人で居るのかと思ったのに、今の電話で、蠅男には連れの人物があることが分った。

それは年若い女性だった。

(し、失敗ったッ。オイお竜!)

たしかにお竜――と蠅男は呼んだ。

そのお竜のことであるが、彼女は何か帆村に云いたがって電話に懸ったが、僅か数語しか喋らないうちに、蠅男が警官隊の襲来を知らせたので、話はそのままに切れた。

だがその短い数語によって、彼女は何者かということがハッキリ分ったような気もする。

(けさから、宝塚であたしたちをつけて……)

といったが、今朝から宝塚でつけた女といえば、あの池谷医師の連れの女の外ないのである。あれがお竜にちがいない。丸顔の背のすらりとした美人であった。年齢のころは、見たところ二十四か五といったところだったが、たいへん仇っぽいところから、或いはもっと年増なのかも知れない。

その怪しの美人お竜は、池谷医師と連れだって、新温泉の娯楽室のなかで一銭活動写真のフィルム「人造犬」