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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

堤のところに待っていた一台の警察の紋のついた自動車がよばれ、それにドクトルと検事は乗りこんで、出かけていった。

帆村は、はじめて見た鴨下ドクトルの去ったあとを見送りながら、

「フーム、実に興味津々たる人物だ」

と歎息した。

そして正木署長の方を向いて、鴨下ドクトルが帰館して、あの暖炉のなかの屍体のことをどういったか、それからまたドクトルは何処に行っていたのかなどという予て彼の知りたいと思っていたことを訊いてみた。

それに対して署長は苦笑いをしながら、イヤどうも万事あの調子なので、訊問に手古ずったがと前置きして、次のように説明した。

すなわちドクトルは、急に思いたって東京に行っていたのだそうである。そして十二月一日から五日まで、上野の科学博物館へ日参して博物の標本をたんねんに見てきたそうである。宿は下谷区初音町の知人の家に泊っていたという。

それから暖炉のなかの屍体は、一向心あたりがないという。これはお前たちの警戒が下手くそのせいだとプンプン怒っていたとのことである。

ドクトルのいったことが正に本当かどうか、それは上申して目下取調べを警視庁に依頼してあるということだった。