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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
「もうこうなったら、仕方がありませんよ。それより、今燃えかかっている石炭の火を消して、あの脚をなるべく今のままで保存することにしては如何ですか」
帆村は慰め半分、いいところを注意した。
「そうだすなア」と大川は膝を叩いて、後をふりかえり、
「オイ、お前ちょっと水を汲んできて、柄杓でしずかにこの火を消してんか。大急ぎやぜ」
それから彼は、もう一人の警官に命じて、電話を見つけ、本署に急報するようにいいつけた。
帆村は、そのときソッと其の場を外した。部屋を出るとき、ふりかえってみると、大川巡査部長は長椅子の上にドッカと腰うちかけ、帽子を脱いていたが、毬栗頭からはポッポッポッと、さかんに湯気が上っているのが見えた。
不意打ち
いかに帆村といえども、内心この恐ろしい惨劇について、愕きの目をみはらないではいられなかった。主人鴨下ドクトルの留守中に、ストーブの中で焼かれた半焼屍体? 一体どうした筋道から、こうした怪事件が起ったかは分らないけれど、とにかくこの家のうちには、もっともっと秘密が伏在しているのであろう。彼はこの際、できるだけの捜査材料を見つけだして置きたいと思った。