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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

それはすこし乱暴すぎる行いではあったが、たしかに手応えはあった。

ガラガラガラという大きな音とともに、煙道の中からドッと下に落ちてきた大きなものがあった。それは、同時に下に吹きだした黒い煤や白い灰に距てられて、しばらくは何物とも見分けがたかったけれど、その灰燼がやや鎮まり、思わずストーブの前から飛びのいた警官たちがソロソロ元のように近づいたころには、もう疑いもなく、煙道の中から落ちてきた物件が何物であるかが明瞭になった。

半焼けの屍体!

それはずいぶん奇妙な恰好をしていた。半ば骨になった二本の脚が、火床の上にピーンと天井を向いて突立っていた。

それは逆さになって、この煙道の中に入っていたものらしく、胸部や腹部は、もう完全に焼けて、骨と灰とになり、ずっと上の方にあった脚部が、半焼けの状態で、そのまま上から摺り落ちてきたのだった。

男か女か、老人か若者か。――そんなことは、ちょっと見たくらいで判別がつくものではなかった。

「コラ失敗うた。検事さんから、大きなお眼玉ものやがな。下から突きあげんと、あのまま抛っといたらよかったのになア」

と、巡査部長は火掻き棒を握ったまま、大きな溜息をついた。