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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

「いや話を聞いておくだけなら、悪かなりませんよ」と帆村は弁解して、「――もちろん種があるんです。これは有名なシャーロック・ホームズ探偵がときに用いたと同じような手なんです。――さっき青年上原君に燐寸を借りたでしょう。あの燐寸は、燕号の食堂で出している燐寸です。まだ一ぱい軸木がつまっていました。夜には大阪着ですから、ここへ二人が現われた時間が十時頃で、燕号で来たことは皆ピッタリ符合します。なんでもないことですよ」

「ははア燐寸と鉄道時間表の常識とが種だっか」と警官は大真面目に感心して、「すると東京が暖いとか、雨が降っていたというのは――」

「あれは、上原君なんかの靴を見たんです。かなりに泥にまみれていました。ご承知のように、わが大阪は上天気です。しからば、あの靴の泥は東京で附着したのに違いないでしょう。それも雨です。もし雪だったら、ああは念入りに附着しませんよ。今年は十一月からずっと寒い。東京は何度も雪が降った。それだのに昨日は雨が降ったというのですから、これは暖かったに違いないでしょう」

「はあ、そういうところから分りよったんやな、なるほど種は種やが、鋭い観察だすな。