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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

があるんです。そこであなたがたよりは、小さいことも気にしなきゃならんのです。目につくものなら、何なりと逃がさんというのが、私立探偵の生命線なんでして――」

「もう止せ、帆村君。手品の種明かしの後でながなが演説までされちゃ、折角保護している玉屋総一郎氏が蠅男の餌食になってしまうよ。そうなれば、今度は、こっちの生命線の問題だて」

そういって村松検事は、時計を見ながら、帆村の肩を指で突いた。

しかし、警官は、何に感心したものか、いつまでも、「なるほどなアなるほどなア」と独り言をいいながら、二人の出てゆくのにも気がつかない風だった。

生きている主人

夜はいたく更けていた。

仰ぐと、寒天には一杯の星がキラキラ輝いていた。晴れ亙った暗黒の夜――

ほとんど行人の姿もない大通りを、村松検事と帆村荘六の乗った警察自動車は、弾丸のように疾駆していった。

天下茶屋三丁目は、スピードの上では、まるで隣家も同様であった。

玉屋邸の前で、二人は車を下りた。

扉を開けてくれたのを見ると、それは、帆村もかねて顔見知りの大川巡査部長だった。彼は直立不動の姿勢をして、

「――私がもっぱら屋外警戒の指揮に当っとります」