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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

そして一体彼はどのようなフィルムを外して持っていったのだろう。

「うむ。そうだ。せめて池谷医師が外していったフィルムは何んなものだったか、それを確かめるだけなら、なにも悪かないだろう」

帆村は自分の心にそんな風に言訳をして、立っていたところを離れた。

近づいてみると、係りの男は活動函を元のように締めて立ち上ったところだった。彼は函の前に廻って覗き眼鏡のすぐ傍に挿しこんであった白い細長い紙を外しに懸った。それは函の中の一銭活動の題名を書いてある紙札であった。

「おやッ。――」

帆村は、なんとはなしにギョッとした。係りの男の外した紙札には、明らかに「人造犬」の三文字が認められてあったではないか。あれほど先刻帆村が面白く見物した「人造犬」の活動写真だったのである。

係りの男は、帆村の愕きに頓着なく、そのあとへ「空中戦」と認めた紙札を挿しかえた。

帆村はもう辛抱することができなかった。

「ねえ、おっさん。さっき入っていた『人造犬』の活動は、警察から公開禁止の命令でも出たのかネ」

遉に帆村は、聞きたいことを上手に偽装して訊いた。

「イヤ、そやないねン。あの『人造犬』