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はえ

蠅

海野 十三

「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页

青空文庫

タンガニカで、博士は奇妙な一つの卵を見付けたのだった。助手がさきほども、駝鳥のような卵といったが、全くそれくらいもあろう。色は淡黄色で、ところどころに灰白色の斑点があった。それは何の卵であるか、ちょっと判りかねた。なにしろ、この地方は、前世紀の動物が棲んでいるとも評判のところだったので、ひょっとすると、案外掘りだしものかも知れないと思った。鳥類にしても、余程大きいものである。それではるばる博士の実験室まで持ってかえったというわけだった。そして他の動物資料と一緒に、タンガニカの砂地と同じ温度を保たせた恒温室の中に二十四時間入れて置いたというわけである。

ガン、ガラガラッ。

ガラガラガラッ。パシーン。

博士はパイプを床にとり落した。それほど物凄い、ただならぬ音響がした。音の方角は、どうやら恒温室だった。

「さては恒温室が、熱のために爆発らしいぞ」

博士は驚いて戸口の方へ歩を搬んだ。扉に手をかけようとすると扉の方でひとりでパッと開いた。――その向こうには、助手の理学士の土色の顔があった。しかも白い実験衣の肩先がひどく破れて、真赤な血潮が見る見る大きく拡がっていった。