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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
お浦の投げた縞の胴巻は、典膳の膝の辺へ落ちた。それへ、金包みを入れた典膳は、ノッシリと立ち上がったが、礼も云わず、客人を掻き分けると、場外へ出て行った。
その後を追ったのは、お浦であった。
典膳の運命は
この日が夜となり、火祭りの松明が、諏訪神社の周囲を、火龍のように廻り出し、府中の宿が、篝火の光で、昼のように明るく見え出した。
この頃、頼母は、物思いに沈みながら諏訪神社と府中とを繋いでいる畷道を、府中の方へ歩いていた。賭場で見聞したことが、彼の心を悩ましているのであった。渋江典膳という浪人が、五郎蔵を脅かした言葉から推すと、いよいよ五郎蔵は来栖勘兵衛であり、飯塚薪左衛門は、有賀又兵衛のように思われてならなかった。そうして、五郎蔵が来栖勘兵衛だとすると、神棚に祭られてあったのは、天国の剣に相違ないように思われた。このことは頼母にとっては、苦痛のことであった。
(天国の剣が、存在するということが確かめられれば、父の説は、誤りということになる。しかるに父は、その誤った説で、五味左衛門と議論したあげく、試合までして、左衛門を打ち挫き、備中守様のご前で恥をかかせた。