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けつえきがたさつじんじけん
血液型殺人事件
甲賀 三郎
「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年6、7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,256 字 · 71 页
「何の用だか分りませんけれども、会いたいんだそうです」
私は大急ぎで着物を着替えて、乱れた頭髪を掻き上げながら階下に降りた。
階下にはキチンとした服装をしたモダンボーイのような若い男が立っていた。それがS署の刑事だった。
「鵜澤さんですか。実はね、毛沼博士が死なれましてね――」
「え、え」
私は飛上った。恰で夢のような話だ。私は昨夜遅く、毛沼博士を自宅に送って、ちゃんと寝室に寝る所まで見届けて帰って来たのである。私だって、兎に角もう二月すれば医科の三年になるんだから、危険な兆候があったかなかった位は分る。毛沼博士は酒にこそ酔っていたが、どこにも危険な兆候はなかった。博士は年はもう五十二だが、我々を凌ぐほどの元気で、身体にどこ一つ故障のない素晴らしい健康体なのだ。
私が飛上ったのを見て、刑事はニヤリと笑いながら、
「あなたは昨夜自宅まで送ったそうですね」
「ええ」
「参考の為にお聞きしたい事があるので、鳥渡署まで御苦労願いたいのですが」
「まさか、殺されたのじゃないでしょうね」
病死ということはどうしても考えられないので、ふと頭の中に浮んだ事だったが、頭が未だ命令も何もしないのに、口だけで勝手に動いたように、私はこんな事をいって終った。