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せいようのはまやき
西洋の浜焼
中谷 宇吉郎
本文「あまカラ 第五十二号」甘辛社、1955(昭和30)年12月5日<br>付記「あまカラ 第五十八号」甘辛社、1956(昭和31)年6月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,797 字 · 10 页
その中に大きい丸太をいっぱい放り込んで、盛んな焚火をする。
やがて石塊も土もすっかり焼け、おき火がこの四角の場所いっぱいに出来る。頃合を見計らって、燃え残りの丸太をとりのけ、このおき火の上いっぱいに、生の海藻を敷くのである。
あらめふうな褐色の海藻で、磯の手近なところにたくさん生えている。ごく平凡な海藻である。もちろんおき火の上に海藻をのせるのであるから、もうもうたる湯気が上がる。その上にどんどん海藻を重ねて、厚さ二寸近くまでにする。この海藻のむしろの上に、貝と蝦と野菜類とを載せて、上からすっかりテント用のキャンバスでおおう。そしてしばらく待っていると、貝はすぐ蒸せるので、それを先きに取り出す。キャンバスをあけると、湯気が白々と立って、貝はもう蒸されている。
この料理をするのは、特別の店で、男衆の気風にも、魚河岸の連中みたようなところがある。たいへん威勢がよくて、銭湯の桶そっくりのプラスチックの鉢に、たくさんクラムをつかみ入れ、それを一人一人に渡してくれる。食卓も、野外に備えつけられた粗末な白木の長机である。
卓上には、液状バターを入れた小さなコップが、お客の数だけならんでいる。