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スペインのこい

西班牙の恋

国枝 史郎

「新趣味」1923(大正12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,387 字 · 49 页

青空文庫

六 半人半獣の妖怪

ドクトル、どうだね、この意見は?」

「全然無いことでもありません」検医は真面目にこう答えました「勿論、極めて稀ではあるが、前例も幾つかございます」

検事と警察医とのこの言葉を丁度裏書でもするように、先刻から室を調べていた一人の刑事が額縁から――壊れた硝子窓と向かい合った正面の卵色の壁の面へ、斜めに釣るした油絵の額の、金箔を鏤めた額縁から、何か小さい物を摘み出しました。

「何だ?」と検事が訊きました。

「拳銃の弾でございます」

「見せろ」と検事は刑事の手から拳銃の弾を取りました。

「成程、これは拳銃の弾だ、それでは、お嬢さんの仰有る通り、何者か外からこの室を眼がけて拳銃を放ったに相違ない。それでは一応、庭の方を……」

斯う云って検事は先に立って、庭の方へ一同を導きました。私も従いて行きました……。

六 半人半獣の妖怪

窓の下は花壇でございます。私、先刻も申した通り、花壇は荒らされて居りました。百合や鳳仙花や水葵や、草芙蓉などの美しい花は、大概無残に蹂躪られて、わけても私が大事にしていた冬薔薇の花は名残りも止めず地に散り敷いて居りました。

一番私達を驚かせたのは、其辺一面に靴の跡が、着いていることでございます。