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しんらんしょうにんについて
親鸞聖人について
吉川 英治
「毎日新聞」1962(昭和37)年10月1日号から9回に分けて連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,038 字 · 29 页
親鸞のそういう言葉はですね、それは“いいえ、いいえ、あなたはそういうふうに私は悪人だ、悪いことをした、私はあやまったことをした、私はこんなことをしちまったとおっしゃるけれども、実はこの親鸞も同じなんですよ。あなたと変わるところはないんですよ。なんで私があなたに教えを与えるというなにを、持ちましょうか”――これが、あの親鸞のほんとうの気持です。つまり壇の上からいうんでない。人にそう訴えられると、その人のいうしぐさまで、自分も下りてきて、一緒にいるんです。一緒に苦しんでるんです。
この愛の深さから考えますと、僕はやはり愛情ということにおいて、この親鸞という人はですね、いろいろ宗教人には歴史上にも偉い人はたくさんでていますが、愛情の点では親鸞はもっとも深かった。もっとも私たちに身近な人だったと思います。ですから、従来、貴族あるいは権力者の上においてのみ栄えてきた仏教で、とりつく島もないような姿だったこの低地の庶民たちが、みんな親鸞のまわりに寄ったんですね。しかしそれにはまた、それのそねみ、うらみなどが、親鸞のお子さんからも、門徒のなかからも、さらには時の鎌倉幕府のなかからも、いろいろな政治的な動きがあったりして、再び念仏停止をうけるような目にまであいました。