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ていそうについて

貞操について

宮本 百合子

「婦人公論」1946(昭和21)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,541 字 · 11 页

青空文庫

バルザックは「人間喜劇」をかいた。しかし、日本の文学の中には「家」がある。鴎外の歴史文学の卓抜した諸作品には、「阿部一族」のように殉死という忠節の表現さえ、「家」を守る武家の痛ましい封建的な経済事情によるものであることを鋭く描き出した。婦人は「家」に属し、その利害に応じて一生を費し、「家」のために貞操を強要された。「家」の所属品として、きずのないことを求められつづけた。しかも、封建の女の生涯に「家」というものは何であったろう。「女は三界に家なし」無限の悲哀を誘うこの現実と、生殺与奪の権利をもった男たち、その父、その良人、その息子からさえ監視されて、貞節に過さなければならなかった女の生涯を眺め合わせたとき、私たちは心から慄然とする。女とはどういう生きものと思われて来たのであったろうか、と。

ヨーロッパ諸国の社会の進歩とルネッサンス以来の人間解放の方向とは、中世封建の社会から女にだけ強要された野蛮な貞操の縛しめをといた。世界に資本主義の生産と経済が発達するにつれて個人の権利は主張されて近代資本主義社会の機構の範囲で民主的な国々では、社会における男女の等しい権利とともに、その恋愛や結婚、離婚、互の愛への責任としての貞潔に対する同じ責任と義務とを見るようになった。