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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

彼の小さい心は、好奇心と恐怖で張りきり、鼓動が耳の中でしているように感じられた。逃げ出したいほど気味は悪いけれども、もうこうなったからには「弱え奴等」にアッと云わせるだけ強そうでなければならないと覚悟を定めて、彼は、肩を怒らし大股に進んで行ったのである。

けれどもこの驚くべき勇士の決心は、赤肌をした松の幹の高い所に、二本の青い人間の足がブーラ、ブーラとしているのを見出した瞬間、何の役に立ったろう! 彼はサッと青くなって、跳び上りざま仲間へ向って、

「首縊(くびかか)りだぞッ!」

と叫ぶや否や、蹴飛ばされたように墓石の間をすり抜けて、往還の方へ逃げ去ってしまった。

この意外な一声に、他の子供等はどのくらい仰天したことだろう!

彼等は我を忘れて、いろいろな叫び声を上げながら、狭い小道を犇き合って、我勝ちにこの飛んでもない場所から逃げ出した。

急に、ヒッソリ閑としてあたりには木立ばかりがざわめいて、少しばかりの「きのこ」のささった笹が、投げ捨てられたまま、揺れる二本の足の下で、風に煽られていた。

子供等の先達で、村の男共はほとんど皆墓地に集った。多勢一塊りになり、努めて付元気を出しながら嘘であれかしと近寄って見ると、何事だろう!