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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
と真面目に口を出した。
皆はびっくりして、いたずらの手を止めて男の顔を見ていた。すると、中でも一番頭株らしい十四五の子は、口を尖(とんが)らして、理窟をこね出した。
「わりゃあ朝っぱらから、おっかあに怒鳴られてけつかる癖にして、俺らの世話焼けるんけ? う?」
「おめえあの人知ってるんけ?」
一人の子がヒソヒソときくと、急にこの子は得意そうな顔になって、一層冷笑的な口吻で叫んだ。
「うん、知ってっとも!」
「水車屋(くるまや)の新さんてだなあ、おめえは。そんで北海道から、食えなくなって、おっかあんげへ戻って来たんだって、こんねえだおめえのおっかあがいってたぞ。いくじのねえ奴だて……」
皆は声をそろえて笑った。
けれども、新さんは別に顔色も変えずに、
「考(かんげ)えてからするもんだぞ」
と云いながら行ってしまった。
それから一しきり、子供達は腹の癒(い)えるほど妙な新さんを罵ったけれども、もう一旦やめたいたずらはまたやる気にもなれず、肌ぬぎにした善馬鹿を、各自(めいめい)が、
「俺らの知ったこっちゃねーえぞ!」
と叫びながら一足ずつ蹴りつけて、ちりぢりばらばらに走(か)けて行ってしまった。