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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
「ほいと」というのは「乞食」を指す方言であったのだ。
八
この村の農民共は、子供の教育などということをちっとも考えていない。子供等は生み落されたまま、自然に大きくなって男になり女になりして行くのである。
もちろん彼等だって子供は可愛い。けれども、すべて単純な感情に支配されている彼等は、子供を育てるにも、可愛いとなると舐殺(なめころ)しかねないほど真暗になって可愛がる。
が、若し何か気に入らないことや、憎いことをしでもしようものなら、彼等はほんとに可愛さあまって憎さが百倍になってしまう。擲(なぐ)る蹴る罵るくらいはあたりまえで、ひどくなると傷まで負わせて平気である。
そんなときは、子供だなどという気持はなくただ憎らしい、ただ腹が立つばかりなのである。
それ故、子供等はよほど健康な生れ附きでないと、大抵は十にならない内に死ぬかどうかしてしまう。
どんな木の実でも草の実でも、食べたい放題食べ、炎天で裸身(はだか)になっていようと、冬の最中に水をあびようと、くしゃみ一つしない人間が育って行くのである。
病気になれば、医者にかけるより先ずおまじないをするので、腐った水をのまされたり、何だか分らない丸薬を呑まされたりして、親達の迷信の人身御供(ひとみごくう)に上るものは決してすくなくない。