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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

彼等が間違っていたのかということにも「そうにきまっているじゃあないか」とそれほどの断言は下されない。つまり私には分らないのである。

このことは、私に種々なことを考えさせた。そして、世の中の多くの多くの事件が、いわゆる明快なる判断力で、まるで何といって好いか素晴らしい無造作で、ドシドシと片づいているのが恐ろしいようになった。けれども、私は、このように種々のことが起り、考えずにはいられなくなって来るのは好いことだと、とにかく思った。そして、起って来るだけのことは正直に受け入れて、正直に考え感じなければならないと思ったのである。

その晩も私は独りで自分の書斎に坐って、あれからこれへと考えていた。外は非常に月がよかった。で、いつものように灯を消して、真暗な処から世界の異ったように美しく見える、耕地の様子や山並みを眺めながらいたのである。

すると、暫く経ってから、芝生の彼方の方から何か軽い音が聞えて来た。どうも何かの足音らしく調子を取っている。そして、その草葉のすれるような、押えつけるような音は、だんだん近づいて来た。

近づくに随ってとうとうそれは人間が忍び込んで来たのだということが分った。