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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

ただ俺ら皆分って死にてえ。どうぞ昔のおっかあと俺で別れてえ、なあおっかあ? こん間(ねえだ)の豆のことだて、俺らにゃどうしても腑に落ちねえ」

「腑に落ちねえがどうしただ? 俺らおめえの云うこたあ分んねえよ。馬鹿! おふくろー悪者にしようとすんーような奴ー持った俺れが因果よ。面白くもねえ。何とでも云えよ。俺れえ一人悪者になってりゃおめえは嬉しかっぺえなあ、おい! 嬉しかっぺえよ」

と神経的に涙をこぼし始めた。

新さんは情ない顔をして、黙ってこの様子を見ていたが、やがて蒲団の下から胴巻を出すと、

「おっかあ! もうちんとばっかしだが、こりょおめえに預けとく。どうぞそんで埋めとくれ。俺ら持ってても何の益(やく)にも立たねえかんな」

と、母親の膝元に押しつけた。

おふくろは、ちょっと目を輝かせた。そして少し間が悪そうに、

「そうかあ」

と、云いながら早速これを持って、立って満足げに行く様子を見送ると新さんは、嬉しそうに微笑して目を瞑った。

「おっかあ! おめえも決して悪(われ)え人じゃねえ。が、俺ら辛えや。昔のことー思い出すのが辛えや、なあおっかあ! 俺ら何ちゅう睦まじいこったったろうなあ」