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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

「…………」

「急にこげえなことー云うと、おっかあ気い悪くすっかもしんねえが、俺らもうとうてい助からねえと思ってる。そんで、早く家の仕事うちゃんとするもんを定めときね、誰でもええ。おめえのええと思う者を定めたがええと俺ら思ってる」

おふくろは妙な顔をしたが、いきなり大きな声で怒鳴った。

「なにいあてこすり云ってけつかる! よけいなこと世話焼かねえですっこんでろ、馬鹿奴! 俺らに貴様の心ん中が分んねえと思うんか?」

「まあ、そげえに怒んなよ、おっかあ! 俺らあてこすりでも何でもねえ、ただ思ってること云ったんだ。……俺ら、北海道さ行(え)がねえ前のことを思うと、ほんに今が辛え。俺ら何んでもおっかあにつくそうと思ってんだ。どんなこってもええ、おめえの思ってんことーすっかり俺れに打ちあけてくんねえか! なあ、おっかあ、俺らはもうどんほども生きらんねえ、そいつが願(ねがい)んだ。昔を思い出してくれねえか?」

「なにい嚇してけつかんだ! 駄目だえ。だまそうたてだまされるもんけ。面(つら)でも洗って出なおせッちゃ」

「そうじゃねえよ、おっかあ! 俺らどうしようにもこの体で出来ねえな分ってんでねえけ。