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にせもの

贋物

葛西 善蔵

「早稲田文学」1917(大正6)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,476 字 · 43 页

青空文庫

離れていても、継母はおりおり耕吉への皮肉な便りを欠かさなかった。「あまり勉強がすぎても身体に毒だから、運動がてらその辺の往来の馬糞を集めておいてくれ」といったようなことである。耕吉はそんな便りを聞くたびに、妻子の前へも面はゆい思いのされたが、苦笑にまぎらしているほかなかった。

「お継母さんはあのとおり真向な、念々刻々の働き者だからいい人だと思うけれど、何しろあの毒舌には敵わん。あれだけは廃してくれるといいと思うがなあ。老父までもかぶれてすっかり変な人間になっちゃったよ。俺も継母が来てから十何年にもなるけれど、俺は三月といっしょに暮したことがないもんだから、俺は俺の継母ほどいい継母というものは日本じゅうどこ捜したってあるまいと思ってたんだがね、今度ですっかり継母の味というものが解っちゃった」

耕吉は酒でも飲むと、細君に向って継母への不平やら、継母へ頭のあがらぬらしい老父への憤慨やらを口汚なく洩らすことがあった。細君は今さらならぬ耕吉の、その日本じゅうにもないいい継母だと思っていたという迂愚さ加減を冷笑した。そして「私なんか嫁入った当時から、なかなかただの人ではないと思ってた」