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にせさつじけん

贋紙幣事件

甲賀 三郎

「少年倶楽部」1930(昭和5)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,495 字 · 17 页

青空文庫

僕は先刻の和尚さんが来たら又怒るだろうと思って気が気ではなかった。すると、向うの方から急いで来る和尚さんの姿が見えたから、僕は縁の下を覗きながら大きな声で、

「来たッ!」と云った。

森君は急いで這い出して来て起上ると、泥を払う暇もなく、

「風岡君逃げろ、逃げろ」と云って、一目散に走り出した。僕も夢中で駆け出したが、先に駆けて行く森君の手を見ると、何だか瓶みたいなものを掴んでいた。

「待てッ! こら泥棒!」

和尚さんは大きな声で怒鳴って、ドシンドシンと僕達の後を追い駆けて来た。僕達はもう少しの所で捕まる所だったが、その時に森君は以前に見て置いたと見えて、村の交番の中に駆け込んだ。(ここは交番と云うのではなく駐在所と云うんだそうだ)僕も続いて駆け込んだ。中にいた巡査は目を丸くした。

「そ、そいつは泥棒です」

息を切らしながら後から駆けて来た坊さんは、巡査とは知合の中だから、ちょっと会釈して、僕たちを睨みながら云った。

「泥棒でも何でもありませんよ。坊さんの方が悪いのです。これを見て下さい」

森君も息を弾ませながら云って、手に握っていた瓶を巡査の前に差出した。

「な、なんじゃね。