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あかいステッキ
赤いステッキ
壺井 栄
「中央公論」1940(昭和15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,482 字 · 23 页
「お母たん、めくらいうたら克のことかい」
と、突っかかるような調子でたずねられると、お母さんは、さて何と答えようかと克子の顔を眺める。そんなときの克子は、上瞼を伏せてめくら特有のくまどったような目つきをし、今にも泣きだしそうに口尻を細かくふるわせていた。外で遊んでいて、めくら、めくら、となぶられてきた腹立ちがみなぎっているのが、肩のはらせ方にまで現われていた。これまでにも、お前は目が悪いのだからと聞かせることはたびたびであったが、それでも克子自身、視力のにぶいということが、持っていたものを失ったのではなく、はじめから持っていなかった自然さで、はたの者が考えるほどの不自由は感じないもののように無邪気にふるまっていた。それでも五つになり、人なみに知恵づいてくるにつれて、このごろでは、自分だけがほかの子供とはちがった目を持っていることを少しずつわからされてくるようになった。しかし、その知らされ方は克子にとっては我慢のならないことにちがいなかった。そういう克子に、お前は、ほんとうはめくらなのだとはどうしてもいえないし、またお母さん自身も、克子をめくらだとは思いきれなかったからかもしれない。