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あかさかじょうのからくり

赤坂城の謀略

国枝 史郎

「日の出」1935(昭和10)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页

青空文庫

それとも知らない寄手の勢は、陣屋陣屋の戸をとざし、この吹降りには城兵といえども、よもや夜討などかけまいと、安心しきって眠っていた。

と、正成たちは忍びやかに、寄手の陣屋の前を通り、千早の方へ潜行した。

「誰だ!」

と突然声がかかった。

寄手の大将長崎四郎左衛門尉、この人の陣屋の厩の前に、さしかかった時であった。

流石に正成もハッとしたが、

「これは大将御内の者でござるが、道に踏み迷うてかくの通り」

と、早速に云い放して足を早めた。

「怪しい曲者」

「射て、討ちとれ!」

声に応じて弦鳴りがし、正成の左臂に矢があたった。

(南無三宝)

と正成は思った。

が、不思議にも矢が立っていない。

(はてな?)

と思いながら数町走り、そこで初めて臂を調べてみた。

日頃信じて読誦し奉る、観音経を入れた守袋に、矢の立った痕があらわれていた。

(神仏の加護)

と正成は思った。

(神の界に属しまつる宮方に、お味方仕るこの正成に、神仏の加護あるは必定か、それにいたしても忝けなし)

こう思わざるを得なかった。

二十町あまりも落ちのびた時、今まで籠城していた赤坂城に――寄手の関東勢二十余万人を、釣塀、投大木、熱湯かけで、防ぎ苦しめた赤坂城に、焔が高く上ったのが見えた。