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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

然しその外界の快活が却って私の心を重苦しく圧えつけた。私は一人下宿の室に閉じ籠っていた。

三日に私は英子の家を訪れた。

「おや、どうして被入らなかったのです。」

斯ういって喜ばしく私を迎えてくれたのは英子の母であった。私は其処で初めて静かな家庭の屠蘇と雑煮との馳走になった。

英子は妙に真面目くさった顔をしていたが、それでも晴やかな心がその言葉に現われていた。

「私昨日は方々お友達の所を廻ってすっかり疲れてしまったの。」

「私の所へはどうして来なかったのです?」と私は云った。

「だってあなたの方から来て下さるのが本当だわ。それに下宿は私何だか行き悪いんですもの。」

それからまたこんなことを云った。

「あしたの晩、うちで歌留多をやるの。あなたは是非被入らなくてはいけないわ。今お手紙を上げようと思っていた所なの。」

「ほんとうに是非被入して下さい。」と春子さんもいった。「歌留多会などと云うんではありませんから。橋本さん御兄妹とうちばかりですから。あなたが被入らなければ人数が足りないって英子が大騒ぎをしていました所です。」

私はとも角も明晩来ると約束して程なく辞し去った。