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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

英子がまた出かけると云っていたからである。そして私の愛がどうして浮々した英子の心を落ちつけることが出来ないかと、悲しい思いに満たされたからである。

私は四日の晩初めて静子の兄の欽一郎と英子の家で逢った。

彼は静子によく似た顔立であった。細面の眉の細い、そして金歯を時々笑顔の口元に光らしていた。長い髪が額に二三筋垂れ下るのを無雑作にかき上げる癖と、切れの長い眼を瞬く癖とを、私は見落さなかった。

「よく被入して下さいましたね。」と春子さんは私に云った。「あなたは歌留多が余り好きでないからどうかと思って心配していました。」

「いや元来の嫌いではないんですけれど、取れないからです。」

「それは私なんかも実際駄目ですよ。」と欽一郎は云った。

「嘘よ、静子さんから聞いていますわ。」

英子はそう云って眼で笑った。

「いや本当に駄目です。……一体こんなことは女の方が男より早く上達するようですね。静子なんか元は丸で取れなかったものですが。」

「それは初っからお上手な人はありませんわ。」

「所が英子さんなんかは生れつきお上手の方でしょう。」

「あら随分ひどいことを仰言るのね。」

「いや確かに天才肌の人も居ますよ。