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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

然し今私達の運命は推移の最中にある、軽々しく動いてはいけない、と私は思った。それが何を齎すかはやがて分るであろう、と私は思った。

二三日私は下宿に引籠っていた。手当り次第に書物を読みかけてはすぐに疲れて、床を自分で敷いて苦しい昼寝を貪った。夜は眠れないままに催眠剤を取った。がその間英子からは何の便りもなかった。

四日目の晩、私は節々の痛い身を運んで英子の家まで歩いて行った。電車に乗って多くの人と顔を合せるのが嫌だったから。

玄関に出て私を迎えてくれたのは英子自身であった。春子さんが丁度不在だったので、私は英子と暫く苦しい対座を続けた。彼女は妙に興奮していた。

「あなたは三四日前に私の下宿を訪ねては下さらなかったのですか。」と私は云った。

「いいえ。」と英子は簡単に答えて私の顔を見守った。

その時私はほっと安堵の思いをした。何故だか自分でも知らなかった。

私達の間には瀬戸の大きい円火鉢に炭火が一杯熾っていた。私はその赤い火をじっと見守った。如何とも出来ないような張りつめた思いが胸に湧いて来た。然し私は口に出すべき適当な言葉が見出せなかった。

「この頃あなたはなぜそう黙ってばかり居るのですか。