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みちづれ

道連

豊島 与志雄

「中央公論」1924(大正13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,366 字 · 37 页

青空文庫

僕は不案内な土地に一人ぽつねんとして、全く途方にくれてしまった。

幸にも、客があって一台の馬車が出るというので、僕はそののろいがた馬車に五里ばかり揺られていった。がそれから先は馬車が行かない。友の家まではまだ二里余りあるという。もう日が暮れて二時間の余になる。星の光も見えない曇り空の闇夜なんだ。小さな宿場の見すぼらしい宿屋の燈火が、ちらちら瞬いて招いてるように思われる。僕はよっぽどその中へはいってゆこうかと思った。然し今か今かと待っていてくれる友のことを想像したり、その晴やかな而も憂わしい笑顔を思い浮べたりすると、たとい遅くなってもその日のうちに行きたかった。早く行って一晩語り明したかった。で遂に宿屋の方を思い切って、小さな提灯をぶら下げて二里の道を進みだした。

提灯を売ってる店で詳しく道筋を聞いてはきたが、初めての土地のことだし、闇夜ではあるし、道が次第に山裾の方へ高まって、路傍の草が繁くなるにつれて、僕は堪らなく心細い気持に沈んでいった。高い山か低い丘かそれの見当さえもつかず、雑木林のうち続いてる坂道を、真暗な闇に包まれて提灯の火だけを頼りに、而も教わった道を迷わないように用心しいしい、とぼとぼと辿ってゆく心細い気持のなかで、僕は友の姿を恋人かなんぞのように胸中に描いて、自ら元気をつけつけ歩いていっ