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さけぬさんざ

避けぬ三左

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1941(昭和16)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,846 字 · 22 页

青空文庫

三

「さようなことを誰から聞いた」

「おん大将(康政)よりうけたまわりました、なれどもわたくしの申上げたいのはそのことではございません」

三

三左衛門はぐっと拳をにぎりながら、

「そのご軍議のおり太閤さまの御意には、小田原めつぼうのうえは大納言さまをもって関東八州にお封じ申すと仰せられたそうにございます」

「されば、そのようにうけたまわった」

「これをなんとお考えなさいますか」

「…………」弥左衛門は口をつぐんだ。

「いまご領分の駿、遠、甲、信の土地は日本国の中部を押さえ、京へも近く、攻防共に絶好の位置でございます、まして三河は松平のおいえ発祥の地、国土も民も、おいえとは切り離すことのできぬふかい因縁にむすばれております、これに反して、関東八州はあらえびすの国と云われ、都より遠く、国土も民も荒れております、これを経営するのはまったく創業よりはじめるといわなければなりますまい」

「だが、だがそれは、まだそう決ったというわけではなく、また」

「いや決ったことでございます」三左衛門は拳でおのれの膝を打った、「太閤秀吉どのは、徳川家康のまことの力を知っております、だから箱根のかなたへ追いやらなければならぬのです。