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さかやのワンこう
酒屋のワン公
小川 未明
「童話文学」1928(昭和3)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,017 字 · 6 页
そしてまた、おまえはもう天国へきてもいいとお招きになったら、喜んでお月さまのところへゆく。そこには自分がまだ顔を知らない、お母さんもお父さんも、みんな露になって光っていなさるだろう……。」
彼は、月を見上げて、
「お月さま、私は、正直に働いていますけれど、だれも私をかわいそうと思ってくれるものがありません……。」と、訴えたのであります。
このとき、ふいに、目の前へ美しい、やさしそうな女があらわれました。少年は、びっくりしました。よく、月の明かりでその顔を見ると、どこか見覚えのあるような気がしました。
「わたしが、いいところへつれていってあげます。この世の中には、もっと正しいことも、幸福なこともたくさんあるのですよ。わたしは、町や、村や、方々を歩いてきました。そして、どこにしんせつな、よく道理のわかる人間が住んでいるかということも知っています。わたしは、今日から、あなたのお母さんになって世話をしてあげますから……さあ、まいりましょう。」
考えると、いつか犬にかまれた三味線弾きの女でした。酒屋のワン公は、この人につれられて遠くいってしまいました。