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のわき

野分

夏目 漱石

一个直言不讳的文学老师,在乡村中学碰了一鼻子灰。理想撞上现实的台风,他还能像野分一样坚持自我吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,508 字 · 189 页

青空文庫

道也は、あの金縁の眼鏡を掛けた恋愛論よりも、小さくかつ浅いと自覚して、かく慎重に筆記を写し直しているのであろうか。床の後ろでが鳴いている。

細君が襖をすうと開けた。道也は振り向きもしない。「まあ」と云ったなり細君の顔は隠れた。

下女は帰ったようである。煮豆が切れたから、てっか味噌を買って来たと云っている。豆腐が五厘高くなったと云っている。裏の専念寺で夕の御務めをかあんかあんやっている。

細君の顔がまた襖の後ろから出た。

「あなた」

道也先生は、いつの間にやら、筆記帳を閉じて、今度はまた別の紙へ、何か熱心に認めている。

「あなた」と妻君は二度呼んだ。

「何だい」

「御飯です」

「そうか、今行くよ」

道也先生はちょっと細君と顔を合せたぎり、すぐ机へ向った。細君の顔もすぐ消えた。台所の方でくすくす笑う声がする。道也先生はこの一節をかき終るまでは飯も食いたくないのだろう。やがて句切りのよい所へ来たと見えて、ちょっと筆を擱いて、傍へ積んだ草稿をはぐって見て「二百三十一頁」と独語した。著述でもしていると見える。

立って次の間へ這入る。小さな長火鉢に平鍋がかかって、白い豆腐が煙りを吐いて、ぷるぷる顫えている。