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のわき

野分

夏目 漱石

一个直言不讳的文学老师,在乡村中学碰了一鼻子灰。理想撞上现实的台风,他还能像野分一样坚持自我吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,508 字 · 189 页

青空文庫

「あれは徳川侯爵だよ」と中野君は教えた。

「よく、知ってるね。君はあの人の家来かい」

「家来じゃない」と中野君は真面目に弁解した。高柳君は腹のなかでまたちょっと愉快を覚えた。

「どうだい行こうじゃないか。時間がおくれるよ」

「おくれると逢えないと云うのかね」

中野君は、すこし赤くなった。怒ったのか、弱点をつかれたためか、恥ずかしかったのか、わかるのは高柳君だけである。

「とにかく行こう。君はなんでも人の集まる所やなにかを嫌ってばかりいるから、一人坊っちになってしまうんだよ」

打つものは打たれる。参るのは今度こそ高柳君の番である。一人坊っちと云う言葉を聞いた彼は、耳がしいんと鳴って、非常に淋しい気持がした。

「いやかい。いやなら仕方がない。僕は失敬する」

相手は同情の笑を湛えながら半歩踵をめぐらしかけた。高柳君はまた打たれた。

「いこう」と単簡に降参する。彼が音楽会へ臨むのは生れてから、これが始めてである。

玄関にかかった時は受付が右へ左りへの案内で忙殺されて、接待掛りの胸につけた、青いリボンを見失うほど込み合っていた。突き当りを右へ折れるのが上等で、左りへ曲がるのが並等である。