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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
野村胡堂『銭形平次捕物控(九)不死の霊薬』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 页
そっと床を脱け出して、隣の室に寝ている夫新三郎を揺り起しながら、
「旦那様、旦那様、ちょっと、お目に掛けたいものがございます」
と囁きます。
「何だ、泥棒でも入ったというのか」
一刀を提げて、寝巻のままでやって来た新三郎。お国の指さす方を見て、これも思わずギョッとしました。
遅い月が一杯に射した窓格子に、生首が一つ、髻を格子に絡んだまま、ブラ下げてあったのです。
「フーム」
新三郎は一度は唸って躊躇いましたが、次の瞬間には、障子に手を掛けるとサッと引開けました。
水のごとく流れ入る月影。
その青白い光を半面に受けて、窓格子に括り付けられているのは、血だらけの中年男の生首、カッと眼を見開いて、白い歯に下唇を噛んだ、怨みの物凄い形相は、二た眼と見られません。
「あッ」
お国は気が遠くなったようにそこへ崩折れると、何に驚いたか寝付いたばかりの新太郎は、火の付くように泣き出しました。
笹野新三郎の記憶にはこの首の相好が焼き付くように、まざまざと残っております。忘れもしないそれは、今日鈴ヶ森の処刑場で打ち落した首の一つ、死に際まで生の執着にもがき抜いて、一番醜い、一番物凄い最期を遂げた、贋金使いの男の首だったのです。